巨大地震が市場を直撃、日経平均は一時675円安、時価総額は23兆円減少

11日に発生したマグニチュード9.0の国内観測史上最大規模となった「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(東日本巨大地震)の影響で、週明け14日の東京株式市場は急落。日経平均株価は一時675円安の9578円まで売られ、昨年12月1日以来2カ月半ぶりに1万円大台を割った。また、当面の強力なサポートラインと見られていた200日移動平均線(14日現在9839円)も昨年11月17日以来約4カ月ぶりに割り込んだ。

 復興関連銘柄を除き、軒並み安となり、値下がり銘柄数は全体の9割超に達した。東証1部の出来高は48億8361万株、売買代金は2兆7738億円。また、11日に312兆円だった東証1部市場の時価総額は289億円まで減少、わずか一日で23兆円が失われた。

 東日本巨大地震阪神・淡路大震災をしのぐ日本史上最悪の震災だったうえ、原子力発電所からの2次被害によって、首都・東京の電力・交通インフラなどにも多大な影響を及ぼし、不安心理が増幅している。

 想像を絶する被災状況がテレビなどを通じ刻々と伝わるにつれ、復興の長期化および日本経済に与えるダメージなどマイナス思考が株価を押し下げている格好だ。シティグループ証券では3−4月の鉱工業生産は1−2%程度押し下げ、住宅や社会資本に対する総被害総額は5兆−10兆円に達する可能性があると試算している。各企業が東北地方に持つ工場や事業所などの被害状況が不透明な点も、当該企業の株価下落には拍車を掛けているといえる。

 <東京電力がストップ安>

 この日の相場を象徴する銘柄が東京電力 <9501> 。東日本巨大地震東京電力福島第1原発炉心溶融、建屋爆発の重大事故が発生、世界的な原発建設ブームに見直し気運が出るとの見方が台頭している。東京電力がストップ安となったほか、原発関連銘柄が軒並み安。海外メディアは今回の震災に関し、原発の安全性に焦点をあてて報道している。耐震性に高い評価を得ていた日本製原発の海外商談にマイナス影響が出る心配も出てきた。

 個別株では、日立製作所 <6501> が80円ストップ安の414円まで売り込まれ、ストップ安配分。三菱重工業 <7011> が一時50円安の308円まで売られた。東芝 <6502> 、日本製鋼所 <5631> は後場、値が付かず売り優勢のまま、大引けはストップ安配分された。

 <市場の見方>

 市場関係者は今後の経済への影響、株価の行方をどのように見ているのか。

 農林中金総合研究所の主任研究員・南武志氏は震災の具体的な状況が把握できないが、福島原発の事故で電力不足による生産活動にもキャップ(制限)ができたのは痛い。東北や関東の生産設備を稼働させるのに必要な電力の制限がいつまで続くかによるが、4−6月期GDP(国内総生産)が停滞するのは間違いないと見る。

 株価に関しては生産活動の停滞を受け、企業業績が悪化するので、しばらく下押しする可能性が高いとみる。そこまで株価は下がるかは別にして、8000円割れが視野に入れば日銀は追加の金融緩和を考えるだろうとしている。

 ちばぎんアセットマネジメント顧問・安藤富士男氏は15日以降、狼狽(ろうばい)売りや外国人投資家の売りなどで、瞬間的には8000円割れの場面も予想されるとする。ただ、機関投資家の3月決算対策の売りはほぼ終えており、09年3月安値7021円28銭まで売り込まれる可能性は低く、8000円前後で底入れするのではないかとみている。

14日の日経平均株価は、強力な下値支持線とみられていた200日移動平均線(9839円)を大きく割り込み、心理的なフシ目となる9500円が意識される段階に入っている。巨大な悪材料を織り込むには相当の時間を要し、株式市場はしばらく混とんとした状況が続きそうだ。

提供:モーニングスター社より引用